最終更新日:2023年3月31日
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 大澤一郎
自宅
今後住む場所は極めて重要な問題です。会社の社長の場合には社長個人が自宅を所有していることが多く、個人も破産となり自宅を失ってしまうことが多いです。
そのため、破産をする場合今後の住む場所をどのようにするかを検討しておく必要があります。引っ越すことが一般的ですが、例外的に個人再生等により自宅を所有し続けることができることもあります。
なお、賃貸物件に居住している社長の場合、破産による影響は原則ありません。
今後の収入
今後の収入も極めて重要な問題です。破産する会社から社長が報酬をもらうことはできません。そのため、会社が破産すると社長の収入がなくなってしまいます。したがって、社長は新たな収入を何か別の方法で得る必要があります。
社長が収入を新たに得る方法としては、①他の会社で社員として勤務、②新たに法人を設立、③新たに個人事業主として仕事などの方法があります。破産手続きが終了するまでは大きなトラブルを避けるためにも①他の会社で社員として勤務する方法をお勧めします。
現在の仕事の終わらせ方
現在の仕事について、破産をする場合にどのように終わりにするかは大事な問題です。
ある日突然破産申立を裁判所にした場合、取引先、顧客、従業員などに大きな迷惑をかけてしまいます。ある程度の迷惑をかけることは仕方ない部分もありますが、甚大な迷惑をかけないようにしましょう。
現実的には、ある程度区切りのよいところまで業務を行った上で裁判所に破産申立をするという事例が多いです。
なお、早急に管財人が付いた方がトラブルを回避できそうな事案の場合、事前に裁判所に打診をして早急に管財人を付けてトラブルを回避する方法もあります。
社長個人の債務・借入
会社が支払不能・債務超過で破産をする場合、社長個人にも債務があることが多いです。そのため、会社が破産をする場合、社長個人も破産をすることが多いです。
破産をすることにより、社長個人の債務・借入もなくなります。
「破産」というと抵抗があるかもしれませんが、実際には「もっと早くやっておけばよかった」、「気持ちが楽になった」、「経済的に楽になった」という感想が手続きが終わった社長からは多いです。
社長個人の財産
会社が破産した場合、社長も破産することが多いです。そのため、社長個人の財産も原則としてなくなります。
ただし、総額99万円以下の財産は失わないこともありますので全ての財産がなくなるわけではありません。
連帯保証人
会社や社長が破産した場合、親戚や友人知人が連帯保証人となっていることがあります。そのような場合、連帯保証人に全額一括払いの請求がなされることとなります。
連帯保証人が一括で支払うことが難しい場合、連帯保証人も自己破産・任意整理・個人再生などの債務整理を行う必要があることがあります。
従業員
破産する場合、従業員は原則として全員解雇となります。
一定の条件を満たす場合、従業員は未払賃金の立替払いの請求をしたり、失業保険の給付を受けたりすることが可能です。未払賃金の立替払や失業保険給付が早く進むよう経営者は配慮しましょう。
取引先
破産する場合、取引先に迷惑をかけてしまうことが多いです。迷惑をある程度かけることはやむをえませんが、余りにも不義理をするとトラブルの元となりますし、再起の妨げになることもあります。
また、取引先を極端に不平等に扱うと裁判所での手続きの中で問題視される可能性もあります。
そのため、取引先に対してどのように接するかは重要です。この点は個別の状況によって対策が異なりますので弁護士に相談しながら対処しましょう。
車
地域性はあるかと思いますが、車がないと事実上生活できないという地域もあります。どうしても車が必要な場合、時価で20万円未満の比較的安い車を買ったり、親戚・知人から車を借りたりする方法をお勧めします。
破産以外の方法の検討
会社が債務超過・支払不能の場合、破産が望ましいことが多いです。しかし、①破産をせずにそのまま会社を休眠状態にしておく方法、②民事再生・会社更生などの破産以外の法的申立をする方法などもあります。
どの方法が望ましいかは個別の状況によります。弁護士と相談しながら決めましょう。
まとめ
- 会社をたたむ時に検討すべき10項目は①自宅、②今後の収入、③現在の仕事の終わらせ方、④社長個人の債務・借入、⑤社長個人の財産、⑥連帯保証人、⑦従業員、⑧取引先、⑨車、⑩破産以外の方法の検討です。
- 経営者の皆様が一番よい選択をするためにも、専門家弁護士に早めに相談しましょう。