最終更新日:2023年5月26日

社長は別の仕事をすぐに始めても大丈夫です。ただし、①新たな法人設立をする場合、②個人事業主として業務を行う場合は注意が必要です。破産手続が終わるまでは社員として別会社で働くことをお勧めします。

目次

今後の収入と住居が大切

  • 会社(法人)が破産する場合、社長(代表取締役)も破産となることが多いです。そのため、社長は今までの収入や持家を失ってしまうことが多いです。
  • 破産をする際には、今後の収入と住居のことを考えておくことが大切です。

給与は破産をした場合でも全額保護の対象

  • 会社・社長が破産をした場合、今までの役員報酬を社長がもらうことはできません。
  • 経験上、破産後の社長は別会社で社員として働くことが多いです。具体的には、①破産の事情を知っている会社で社員として働く場合、②破産の事情を知らない会社で社員として働く場合のいずれの場合もあります。
  • 社員として雇用契約を締結して働く場合、破産手続中でも給与は全額保護の対象となります。
  • 裁判所・管財人は、社員として働くことに対して異議・苦情を述べることはないです。
  • 債権者も、社員として働くことに対して異議・苦情を述べることは経験上ほぼないです。

新たな法人設立をする場合の注意点

会社・社長が破産する場合、新たな法人を設立して業務を行う場合があります。破産法人と新法人は別法人です。形式上は何ら問題はありません。ただし、次のような場合は問題が発生することがありますので要注意です。

新法人の株主が破産した社長の場合

  • 法人設立時期が会社・社長の破産手続開始決定前の場合、新法人の株も社長の財産です。そのため、株も破産手続で債権者に分配する対象の財産となってしまいますので要注意です。
  • 法人設立時期が会社・社長の破産手続開始決定後の場合、形式的な問題点はありません。しかし、「社長が隠していたお金で新しい会社を設立した」と疑われ、破産手続がスムーズに進まないことがありますので要注意です。

新法人の代表取締役が破産した社長の場合

  • 個人の破産手続開始決定が出た場合、決定時点で委任契約の終了事由となります。そのため、理屈上は取締役をそのまま続けることはできません。
  • また、破産したにもかかわらず別会社の社長になっている場合、「社長が隠していたお金で新しい会社を設立した」と疑われ、破産手続がスムーズに進まないことがありますので要注意です。

個人事業主として業務を行う場合の注意点

社長が個人事業主として業務を行う場合も、一定の権利関係の制限があったり、裁判所・債権者に疑われる可能性があったりします。

裁判所や債権者から疑われないようにすること

  • 破産した会社の社長が別法人を設立していると、基本的に疑われます。特に、「財産隠し」を疑われます。個人事業主として業務を行っている場合も同様に疑われます。
  • 財産隠しを疑われた場合、破産手続がスムーズに進まなくなり、余計な時間や労力を要することとなります。
  • 裁判所・債権者から疑われないためには、社員・従業員として給料をもらうのが無難です。
  • なお、新法人設立や個人事業主としての業務をしたい場合、破産手続が全て終わった後にすることをお勧めします。

社員として働く場合の注意点

  • 破産手続を進めていく場合、弁護士・管財人との打ち合わせがあります。また、指定された日に裁判所に行かなければいけません。そのため、社員として働く場合、ある程度臨時に休む必要があります。なお、裁判所の日程は数カ月前にはわかっていることが多いです。
  • 破産手続をすると一定の資格制限があるときがあります。社員として働く場合に資格が必要な業種の場合には注意しましょう。

まとめ

  • 会社の破産をする場合、社長は別の仕事をすぐに始めても大丈夫です。
  • ただし、①新たな法人設立をする場合、②個人事業主として業務を行う場合は注意が必要です。新法人設立や個人事業主としての業務をしたい場合、破産手続が全て終わった後にすることをお勧めします。
  • 破産手続が終わるまでは社員として別会社で働くことをお勧めします。

(監修者:弁護士 大澤一郎