最終更新日:2023年5月12日
免責不許可となるのは次のような場合などです。
- 債権者を害する目的で財産を減らしたり隠したりすること
- 自分に不利益に財産を処分すること
- 義務ではない特定の債権者を優遇する弁済
- 浪費または賭博による著しい財産減少
- 詐術による財産取得
- 帳簿等の隠滅や偽造
- 虚偽の債権者名簿の提出
- 裁判所の調査への説明拒否や虚偽説明
- 破産管財人の職務の妨害
- 過去の免責
- 説明義務違反など破産法の義務違反
目次
免責不許可とは
自己破産すると借金が原則として0になります。免責といいます。しかし一定の場合には破産しても借金が0になりません。
借金が0になる許可がでないことを免責不許可といいます。
免責不許可事由の一覧
免責不許可になる理由のことを免責不許可事由といいます。
では、免責不許可事由にはどのようなものがあるでしょうか?たとえば、財産を隠すこと、うその報告を裁判所にすることは免責不許可事由です。
そのほかにも免責不許可事由はあります。主な事由は次の通りです。
- 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
- 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
- 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
- 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
- 破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
- 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
- 虚偽の債権者名簿を提出したこと。
- 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
- 不正の手段により、破産管財人等の職務を妨害したこと。
- 免責許可の決定が確定した場合において、免責許可の決定の確定の日から7年以内に免責許可の申立てがあったこと等。
- 説明義務、重要財産開示義務、免責手続における調査義務など破産法の義務に違反したこと
免責不許可事由の具体例
1. 債権者を害する目的で財産を減らしたり隠したりすること
財産を減らしたり隠したりすることは免責不許可事由です。
たとえば、高級な宝石を持っているのに宝石を隠してしまう場合です。
2. 自分に不利益に財産を処分すること
通常の取引では行わないような不利益な取引を行うことは免責不許可事由です。たとえば、ローンやクレジットカードで電化製品や商品券を購入し、その商品を安く売ってお金に替える場合です。
3. 義務ではない特定の債権者を優遇する弁済
義務がないにもかかわらず特定の債権者に優遇して支払うことは免責不許可事由です。たとえば、支払期限がきていないのに特定の債権者だけに弁済をする場合です。
4. 浪費または賭博による著しい財産減少
浪費やギャンブルにより過大な債務を負うことは免責不許可事由です。たとえば、ブランド品の大量購入、競馬による借金増加の場合です。
ブランド品の購入
ブランド品を1~2個購入した程度では免責不許可事由になりません。支出の程度が社会的に許されないレベルだと免責不許可事由となります。
ギャンブル
少額のギャンブルを1回やった程度では免責不許可事由になりません。支出の程度が社会的に許されないレベルだと免責不許可事由となります。
どの程度のギャンブルが免責不許可事由となるかの判断は難しいです。詳しい弁護士にご相談下さい。
投資
投資は浪費に当たることがあります。金額が大きい場合や投機性が高い場合です。
どの程度の投資が免責不許可事由となるかの判断は難しいです。詳しい弁護士にご相談下さい。
5. 詐術による財産取得
相手をだまして財産を取得することは免責不許可事由です。たとえば、今後支払うつもりが全くないにもかかわらずクレジットカードを使って高級品を購入する場合です。
6. 帳簿等の隠滅や偽造
会社の帳簿を捨てたり、嘘の内容を書いたりすることは免責不許可事由です。
たとえば、会社経営者が自分に都合の悪い会社の帳簿を破産手続を始める前に捨ててしまう場合です。
7. 虚偽の債権者名簿の提出
債権者の一覧である債権者名簿を破産申立のときに裁判所に出します。
債権者名簿に虚偽の事実を書くのは免責不許可事由です。たとえば、債権者でない人を大口債権者と書き、他の小口債権者の配当を減らす場合です。
8. 裁判所の調査への説明拒否や虚偽説明
裁判所の調査への説明を拒否したり、虚偽の説明をしたりすることは免責不許可事由です。たとえば、本当は現金を100万円持っているのに、1万円しか持っていないと回答する場合です。
事実と異なる報告をしてしまったことに気付いたときは、早めに正しい事実を裁判所に報告しましょう。
9. 破産管財人の職務の妨害
破産管財人の職務を妨害することは免責不許可事由です。
たとえば、管財人が自宅を売却しようとしているのに、自宅に素性のわからない第三者を住ませて売却をあきらめさせようとする場合です。
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10. 過去の免責
過去に破産して免責確定となっているとき、再度の破産・免責を7年以内に申立することは免責不許可事由です。たとえば、5年前に破産しているにもかかわらず、再度の破産申立をする場合です。
11. 説明義務違反など破産法の義務違反
裁判所や管財人から説明を求められたことに対する回答を拒否したり、虚偽の事実を回答したりすることは免責不許可事由です。
たとえば、破産の申立書に書いてある破産手続きの経緯について管財人が質問をしたにもかかわらず、その質問に回答しない場合です。
免責不許可事由があっても免責されうる
免責不許可事由があると借金は0にならないのでしょうか?免責不許可事由があっても、いつも免責不許可になるわけではありません。多くのケースで借金が0になります。
免責不許可事由があるとき、免責を許可するかは裁判所の裁量に委ねられます。
裁判所が免責許可のときに考慮する要素としては、免責不許可事由の悪さの程度、浪費などの金額、手続に対する協力の程度、生活態度の改善などがあります。
大事なのは裁判所や弁護士に嘘をつかず正直に話すことです。生活態度を改めて裁判所にアピールすることも重要です。
免責されても支払わなくてはいけない負債・債務
破産してもなくならない債権を「非免責債権」といいます。非免責債権は破産しても残ります。
つまり、免責許可となったとしても非免責債権の支払は残るということです。
主な非免責債権は次の通りです。
- 税金等
- 罰金等
- 悪意の不法行為
- 故意・重過失により人の生命・身体を害する不法行為
- 婚姻費用等
- 養育費
- 給料
- わざと債権者名簿から外した債権
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まとめ:免責不許可事由
自己破産すると借金が原則として0になります。しかし、免責不許可事由があると借金が0になりません。
主な免責不許可事由は次の通りです。
- 債権者を害する目的で財産を減らしたり隠したりすること
- 自分に不利益に財産を処分すること
- 義務ではない特定の債権者を優遇する弁済
- 浪費または賭博による著しい財産減少
- 詐術による財産取得
- 帳簿等の隠滅や偽造
- 虚偽の債権者名簿の提出
- 裁判所の調査への説明拒否や虚偽説明
- 破産管財人の職務の妨害
- 過去の免責
- 説明義務違反など破産法の義務違反
ただし、免責不許可事由があっても裁判所の裁量で免責となることが多いです。
(監修者:弁護士 辻佐和子)