最終更新日:2023年5月29日

税金や社会保険料を滞納していても個人再生は可能です。ただし、役所と分割払いの合意をするなどの対策をしましょう。

税金や社会保険は個人再生で減額されない

「借金の総額を減額した上で、分割で返済することを裁判所が許可する手続き」が個人再生です。

個人再生を行うと、銀行や消費者金融の借入など一般的な借金は減額されます。しかし、税金や社会保険料は個人再生を利用しても減額されません。

そのため滞納している税金や社会保険料は、最終的には全額支払わなければいけません。

個人再生を利用できる条件

個人再生を利用するには次のような条件が必要です。

  1. 安定した収入があること
  2. 債務額が5,000万円以下であること
  3. 清算価値分を支払うこと

1. 安定した収入があること

「将来において継続的に又は反復継続して収入を得る見込みがある」ことが個人再生には必要です。また、個人再生は減額した債務を原則3年で分割して支払います。

そのため安定した収入に基づきしっかり返済できるかが重要です。

税金や社会保険料を滞納している場合、支払いのため家計が圧迫されます。

結果として減額後の債務を分割で支払えないと裁判所が判断すると、最終的に裁判所が個人再生を認めない可能性があります。

2. 債務額が5,000万円以下であること

個人再生では債務額が5,000万円以下であることが必要です。債務額を計算するときは滞納している税金や社会保険料の金額は加えません。

たとえば、債務額5,000万円に加えて税金や社会保険料の滞納が100万円あるとき、個人再生は利用可能です。

3. 清算価値分を支払うこと

個人再生では次の金額のうち大きい金額を弁済する必要があります。清算価値保証の原則といいます。

  • 総資産額から総債務額を控除した残額(いわゆる清算価値)
  • 法律により決められた減額後の金額

法律により決められた減額後の金額の一覧表

元々の借金額 支払額
100万円以上
~500万円以下
100万円
500万円超
~1,500万円以下
借金総額の
5分の1
1,500万円超
~3,000万円以下
300万円
3,000万円超
~5,000万円未満
借金総額の
10分の1

たとえば元々の借金額が500万のときは100万円を支払えばよいです。しかし清算価値が150万円だとすると100万円ではなく150万円を支払う必要があります。

資産が沢山あるのに負債だけ減額すると債権者が不利になります。そのため清算価値保証の原則があります。

清算価値を計算するときは、滞納中の税金や社会保険料の金額を控除できることがあります。

たとえば、総資産額300万円で滞納中の税金や社会保険が100万円の場合、清算価値を200万円と評価できることがあります。

税金や社会保険料を滞納中の対策

滞納のままは危険

個人再生では滞納中の税金や社会保険料は減額されません。しかも税金や社会保険料は裁判なしで差押ができます。そのため滞納を放置し続けると財産差押の可能性があります。

多額の滞納があると再生計画に履行可能性がないと裁判所が判断する可能性もあります。

分割払いの合意を目指そう

そのため滞納している状況を放置せず、1日も早く役所と分割払いの合意をしましょう。

正直に事実を説明すると役所は分割払いの合意に応じてくれることが多いです。

親族からの援助を検討しよう

親族からの援助が可能であれば、滞納中の税金や社会保険料を代わりに支払ってもらうことを検討しましょう。

住宅があるときの注意点

住宅ローンがある場合、自宅を残すため住宅資金特別条項付きの個人再生を利用することがあります。

しかし自宅は換価するとまとまった金額になりやすいです。そのため、税金や社会保険料を滞納している場合は差押の対象になりやすいです。

しかも税金や社会保険料については個人再生をしても差押である滞納処分手続きが停止しません。

そのため差押前に早めに分割払いの合意をする必要があります。

まとめ:税金や社会保険料を滞納中の個人再生

税金や社会保険料を滞納していても個人再生は可能です。ただし、役所と分割払いの合意をするなどの対策をしましょう。

(監修者:弁護士 加藤貴紀