最終更新日:2023年5月29日
次のような場合は個人再生は難しいです。任意整理や自己破産を検討しましょう。
- 負債総額が5000万円を超えている場合
- 多額の財産を持っている場合
- 継続的に安定した収入がない場合
- 個人再生後の支払の見込が立たない場合
- 税金等の滞納があり役所と分割払の合意ができていない場合
- 自宅に住宅ローン以外の抵当権(担保)を設定している場合
- 住宅ローン滞納があり銀行と合意ができていない場合
- 所有する自宅に差押がある場合
- 裁判所に虚偽の申告をした場合
- 必要な書類を準備できない場合
- 一部の債権者だけに不公平な返済をした場合
- 半分以上の債権者が反対した場合
- 再生計画案を期限までに出さなかった場合
- 積立指示を守らなかった場合
- 個人再生認可後の支払を滞らせた場合
負債総額が5000万円を超えている
- 個人再生申立では負債総額が5000万円以下であることが必要です。具体的には、住宅ローンを除いた負債総額が5000万円以下であることが必要です。
- 例えば、【住宅ローン3000万円、その他の負債4000万円】の場合、個人再生は可能です。他方、【住宅ローンはなく負債6000万円】の場合、個人再生はできません。
多額の財産を持っている
個人再生が認められると支払総額は通常は大幅に減ります。具体的には減額後の支払額は次の通りとなります。
元々の借金額 | 支払額 |
---|---|
100万円以上 ~500万円以下 |
100万円 |
500万円超 ~1,500万円以下 |
借金総額の 5分の1 |
1,500万円超 ~3,000万円以下 |
300万円 |
3,000万円超 ~5,000万円未満 |
借金総額の 10分の1 |
- ただし、【上記支払額】より【お持ちの財産総額】が多い場合、【お持ちの財産総額】を支払う必要があります。例えば、「負債が3000万円でお持ちの財産がほぼゼロの場合」、支払総額は300万円に減額できます。他方、「負債が3000万円でお持ちの財産が2000万円の場合」、2000万円は支払しなくてはいけません。
- このように、多額の財産を持っていると実質的には個人再生申立が難しい場合が多いです。なお、財産を直前に移転させたり、隠したりすることも当然やってはいけません。
継続的に安定した収入がない
- 「継続的に又は反復して収入を得る見込み」がないと個人再生はできません。そのため、無職で収入がない場合などは個人再生はできません。
- 収入は年金収入やパート収入でも大丈夫です。また、働き始めたばかりでも、今後継続して勤務が可能であることを説明すれば裁判所はおおらかに認めてくれる傾向にあります。
個人再生後の支払の見込が立たない
個人再生をすると、借金総額は減るものの、減った金額を3年から5年の分割払いで返済する必要があります。そのため、3年から5年での分割払いができない場合、個人再生はできません。
税金等の滞納があり役所と分割払の合意ができていない
個人再生後にきちんと支払可能かどうかを裁判所はチェックします。税金等の滞納があり役所と分割払いの合意ができていない場合、個人再生後の支払が難しいと判断されてしまい、個人再生ができないことがあります。
なお、税金や社会保険料は個人再生しても減免の対象とはなりません。
所有する自宅に住宅ローン以外の抵当権(担保)を設定している
個人再生をすると自宅を守ることができます。しかし、自宅に住宅ローン以外の抵当権(担保)が設定されていると個人再生は難しくなります。
住宅ローン滞納があり銀行と合意ができていない
住宅ローンの滞納があり銀行と今後の支払方針についての合意ができていない場合、個人再生後の支払が難しいと判断されてしまい、個人再生ができないことがあります。
所有する自宅に差押がある
所有する自宅に差押がある場合、個人再生後の支払が難しいと判断されてしまい、個人再生ができないことがあります。
裁判所に虚偽の申告をした
裁判所に虚偽の申告をすることは厳禁です。個人再生が認められないだけではなく、最悪の場合、逮捕されてしまうこともあります。
必要な書類を準備できない
裁判所へ申立をする場合、決められた書類を提出したり、追加で依頼された書類を提出したりすることが必要です。書類を提出しないと個人再生が認められなくなってしまいます。
一部の債権者だけに不公平な返済をした
- 一部の債権者だけに不公平な返済をした場合、裁判所が個人再生を認めないことがあります。また、不公平な返済をした分を加味して、大幅に各債権者への支払が増えてしまうこともあります。
- 具体的には、「弁護士に依頼後」の支払は不公平な返済の可能性が高いです。また、「弁護士に依頼前」でも直前の親族等への多額の返済は不公平な返済となることが多いです。不公平な返済かどうかの判断は難しいこともありますので弁護士への相談をお勧めします。
- なお、弁護士に依頼後に新たな借入をした場合、その借入を返済することはできません。不公平な返済となるからです。また、弁護士に依頼後の借入自体が債権者や裁判所に問題視されてしまいます。そのため、弁護士に依頼後に新たな借入をした場合も個人再生が認められにくくなってしまいます。
半分以上の債権者が反対した
個人再生に対して半分以上の債権者が反対した場合、個人再生は認められません。
具体的には、「債権額で半分以上の債権者が反対した場合」や「債権者数で半分以上の債権者が反対した場合」は個人再生が認められません。
認められない例
- 負債額3000万円で2000万円分の債権者が反対した場合
- 債権者数5社で債権者3社が反対した場合
認められる例
- 負債額3000万円で1000万円分の債権者が反対した場合
- 債権者数5社で債権者2社が反対した場合
再生計画案を期限までに出さなかった
個人再生を裁判所に申立すると、再生計画案を裁判所が決めた日までに出す必要があります。
この再生計画案を提出しない場合、個人再生が認められません。なお、再生計画案の提出は弁護士が行うので期限までに提出されないということは少ないでしょう。
個人再生認可後の支払を滞らせた
個人再生が認められた場合、3年から5年で分割払いを行うこととなります。
支払を怠った場合、最終的には再生計画が取消となることが多く、再生計画が成功しないこととなってしまいます。
積立指示を守らなかった
個人再生では、裁判所・再生委員・申立代理人弁護士から積立を指示されることがあります。
この積立は、個人再生が認められた場合に継続的に支払ができるかどうかを確認する手続きです。積立ができない場合には裁判所が認可決定を行わないことが多く、個人再生ができない確率が高まります。
個人再生ができない場合の対応方法
- 個人再生ができない場合、任意整理又は自己破産を検討することとなります。通常は自己破産を検討することが多いでしょう。また、個人再生の条件が整ったのであれば再度個人再生申立をする方法もあります。
- 小規模個人再生申立をしたものの債権者の反対により失敗した場合、給与所得者等再生申立をする方法があります。
まとめ
次のような場合は個人再生は難しいです。任意整理や自己破産を検討しましょう。
- 負債総額が5000万円を超えているケース
- 多額の財産を持っているケース
- 継続的に安定した収入がないケース
- 個人再生後の支払の見込が立たないケース
- 税金等の滞納があり役所と分割払の合意ができていないケース
- 自宅に住宅ローン以外の抵当権(担保)を設定しているケース
- 住宅ローン滞納があり銀行と合意ができていないケース
- 所有する自宅に差押があるケース
- 裁判所に虚偽の申告をしたケース
- 必要な書類を準備できないケース
- 一部の債権者だけに不公平な返済をしたケース
- 半分以上の債権者が反対したケース
- 再生計画案を期限までに出さなかったケース
- 積立指示を守らなかったケース
- 個人再生認可後の支払を滞らせたケース
(監修者:弁護士 大澤一郎)