最終更新日:2023年5月26日

2020年改正の現在の民法では、通常の借金であれば、借金の弁済期から5年間経過すると消滅時効となります。

目次

1. 時効の起算点と時効期間はどうなっていますか?

(1) 民法改正の施行日(令和2年(2020年)4月1日)以後に金銭債権(借金・利息)が生じた場合

改正後民法では、お金の支払いを請求する権利(金銭債権)は、民法などの法律に特別な定めがある場合を除いて、「債権者がその権利を行使することができることを知った時から5年」または「債権者がその権利を行使することができる時から10年」を経過したときは、時効によって消滅すると規定されています。

お金を借りる契約(金銭消費貸借契約)では、貸主は弁済期が来れば借主に対して借金や利息の支払いを求めることができるようになります。

そして、債権者は、契約をしたためその弁済期を知っていることが通常です。そのため、金銭債権については、原則として弁済期から5年経過すると、消滅時効が完成することとなります。

なお、時効期間が経過したからといって、自動的に借金や利息(債務)が消滅するわけではありません。

債務を消滅させるためには、時効期間が経過した後に、債務者が消滅時効を援用(一定の事実を自分の利益のために主張すること)する意思表示をすることが必要であり、これはすべての消滅時効について当てはまります。

(2) 民法改正の施行日(令和2年(2020年)4月1日)よりも前に債権(借金・利息)が生じた場合

改正前民法では、消滅時効は権利を行使することができる時から進行し、債権は10年間行使しないときは消滅し。債権又は所有権以外の財産権は20年間行使しないときは消滅すると規定されていました。

そのため、金銭債権については、原則として借金の弁済期から10年間が経過したときは、時効によって消滅することになります。

ただし、後述しますように改正前民法では商事債権の消滅時効は5年とされていますので、貸金業者からの借金の多くは消滅時効期間が5年となります。

2. 銀行からの借り入れの場合はどうですか?

  1. 改正後民法では、原則として弁済期から5年経過したときに消滅時効となります。
  2. 改正前民法では、商法で商取引によって生じた債権(商事債権)の消滅時効は5年とされていたことから、10年ではなく5年が経過すると消滅時効となります。これは、商取引では、権利関係の確定を早期に行い取引関係を安定させる必要があるという趣旨から、一般の金銭債権に比べて短い時効期間が規定されていました。
    銀行は株式会社などといった会社であり、会社は会社法で商人とされ商事債権の適用がありますので、消滅時効期間は10年ではなく5年となります。
    なお、現在は商事時効の規定は削除されています。

3. 信用金庫から個人で私的に借り入れていた場合はどうでしょうか?

  1. 改正後民法においては、原則として弁済期から5年経過したときに消滅時効となります。
  2. 一方、改正前民法においては、消滅時効期間は5年ではなく10年となります。
    これは、信用金庫や保証協会、住宅金融支援機構(住宅金融公庫)は、会社でもなく商法上の商人ともならないとされていますので、商事時効の適用はなく、一般の金銭債権と同様に取り扱われるためです。
    ただし、信用金庫等が貸主の場合であっても、その借入が例えば個人事業主として事業のために借り入れるなど営業のために借金する場合は商事債権として商事時効の適用があり、消滅時効期間は5年となります。

4. 工事の請負代金債務の場合はどうですか?

  1. 改正後民法においては、原則として弁済期から5年経過したときに消滅時効となります。
  2. 一方、改正前民法においては、消滅時効期間は10年ではなく、3年となります。
    改正前民法では、請負代金請求権のように債権の種類毎に短期消滅時効が定められていました。
    例えば、旅館・料理店・飲食店の宿泊料や飲食料、タクシーの運賃等は消滅時効期間が1年とされていました。
    学校・塾などの生徒に対する授業料や教材費、クリーニング店の代金等は消滅時効期間が2年とされていました。
    医師の診療費や工事の請負代金債権等は消滅時効期間が3年とされていました。
    なお、改正後民法においては、これらの規定は削除されています。

5. 交通事故の加害者になった際の損害賠償債務の場合はどうですか?

  1. 改正後民法においては、物損事故の場合は、被害者等が損害を受けたこと及び加害者を知った時から3年または、交通事故の時から20年で消滅時効となります。
    一方、相手の方に怪我があるなど人身事故の場合は、被害者救済の観点から、被害者等が損害を受けたこと及び加害者を知った時から5年または、交通事故の時から20年で消滅時効となります。
  2. 改正前民法においては、物損事故の場合だけでなく人身事故の場合も、被害者等が損害を受けたこと及び加害者を知った時から3年または、交通事故の時から20年で消滅時効となります。

6. 裁判を起こされていた場合はどうですか?

改正後民法及び改正前民法で変わりません。

弁済期が到来している債権で、債権者から裁判を起こされ、債権者の請求を認める判決が出され確定していた場合は、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は判決確定の時から10年とされます。

7. まとめ

  • 消費者金融、クレジットカード会社からの借入は支払時期から5年間で時効が原則です。
  • 裁判を起こされていた場合、裁判の判決確定から10年間で時効が原則です。
  • 特殊な債務の場合、5年ではない時効期間となることもあります。

(監修者:弁護士 小林義和)