最終更新日:2023年5月29日

原則3年で返済します。ただし、特別の事情がある場合は5年まで延長ができます。

個人再生認可決定後3年間での返済が原則

個人再生では減額後の金額を3年間で支払うことが原則です。そのため、「減額後の債務を3年間で支払いできそうかどうか?」をまずは検討します。

特別の事情がある場合5年間までの延長が可能

  • 特別の事情がある場合、3年ではなく5年までの分割払いができます。3年と5年だけではなく、4年等もできます。
  • ただし、個人再生の再生計画案提出時に年数を具体的に決める必要があります。3年間での分割払いを一度決めた後、「やっぱり支払えない」と5年間に変更できるわけではないのでご注意下さい。

特別の事情の有無の運用実態

  • 「特別の事情」は表現としては「かなり特殊な状況」というイメージの表現です。しかし、実際の運用では特別の事情は広く認められる傾向にあります。
    例えば、5年間での分割払いを認めてもらう場合には①3年間では返済が困難であること、②5年間であれば返済を遂行する見込みがあること、の2つを満たせば5年間の分割払いができることが多いです。
  • 具体的な計算方法としては、予想収入から予想支出を引いて毎月の返済可能額を計算します。そして、その計算した返済可能額を3年間支払っても減額後の金額の支払ができないとします。他方、その返済可能額を5年間支払えば減額後の金額の支払ができるとします。このように、「3年では無理だが5年では可能」という説明ができた場合、5年間の分割払いでの再生計画案が認められる確率が高いです。

5年間での支払が認められる具体例

それでは、具体的な個人再生の事例で見ていきましょう。例えば、負債総額3,600万円、お持ちの財産額200万円で支払ができなくなってしまった方が個人再生をするとします。毎月の収入から支出(生活費等)を引いた金額は6万円とします。不動産は所有していません。

①支払総額

負債総額3,600万円の場合、減額後の支払額は360万円となります。なお、元々の借金額と減額後の支払額の関係は次の通りです。

元々の借金額 支払額
100万円以上
~500万円以下
100万円
500万円超
~1,500万円以下
借金総額の
5分の1
1,500万円超
~3,000万円以下
300万円
3,000万円超
~5,000万円未満
借金総額の
10分の1

②360万円を3年間で支払う場合の検討

【360万円÷36カ月(3年間)】で月額10万円の支払となります。
先ほどの例では支払可能額は月6万円ですので月10万円の支払はできません。すなわち、3年間での支払は困難です。

③360万円を5年間で支払う場合の検討

【360万÷60カ月(5年間)】で月額6万円の支払となります。
支払可能額は月6万円ですので支払可能です。すなわち、5年間での支払は可能です。

④5年間での分割払いの再生計画案の提出

3年では支払できないが、5年では支払できることが計算でわかりました。
そのため、5年間の分割払いの再生計画案を提出すれば、裁判所が5年間での再生計画案を認めることが多いでしょう。

個人再生の返済期間のよくある勘違い

Q. 自分から言わなくても自動的に5年の返済期間になりますか?

通常はなりません。通常は3年での分割払で個人再生のスケジュールを検討します。そのため、3年では難しいものの5年では支払が可能ということは自分から弁護士や裁判所に伝えることが望ましいでしょう。

Q. 再生計画が3年で一度認可されましたが支払できません。今から5年に変更できますか?

変更できません。再生計画案を裁判所に出す段階で分割払いの年数は慎重に検討しましょう。

Q. 5年で裁判所に計画案を出せば必ず5年間の分割払いになりますか?

なりません。裁判所から3年にするよう要請があったり、4年にするよう要請があったりすることがあります。

Q. 5年間で計画を出したいとお願いしている弁護士に言いましたが拒否されました。おかしくないですか?

まずは具体的に計算してみましょう。3年間の分割払いで返済可能な場合には、5年間の分割払いは難しいでしょう。

Q. 3年未満の分割払いはできますか?

通常はできないでしょう。

Q. 5年を超える分割払いはできますか?

通常はできないでしょう。

まとめ

  • 個人再生は減額後の金額を原則3年で返済します。
  • ただし、特別の事情がある場合、5年まで延長しての返済が可能です。
  • 特別の事情は比較的広く認められます。具体的には、「3年間では返済が困難であるものの5年間であれば返済を遂行する見込みがあること」を説明すれば認められることが多いです。

(監修者:弁護士 大澤一郎