最終更新日:2023年5月26日
次の債務・負債等は自己破産してもなくなりません。
- 税金
- 罰金
- 悪意の不法行為
- 故意・重過失により人の生命・身体を害する不法行為
- 婚姻費用
- 養育費
- 給料
- わざと債権者名簿から外した債権
目次
自己破産すると負債はなくなる
自己破産すると負債は原則としてなくなります。たとえば、クレジットカード会社や銀行への支払をする必要がなくなります。
非免責債権は自己破産してもなくならない
では自己破産をしても支払わなくてはいけない負債はあるでしょうか?
破産してもなくならない債権を「非免責債権」といいます。非免責債権は破産しても残ります。そのため非免責債権は支払わなくてはいけません。
非免責債権の種類
非免責債権の種類
主な非免責債権は次の通りです。
- 税金等
- 罰金等
- 悪意の不法行為
- 故意・重過失により人の生命・身体を害する不法行為
- 婚姻費用等
- 養育費
- 給料
- わざと債権者名簿から外した債権
1. 税金等
税金等は破産してもなくなりません。
たとえば、①所得税②贈与税③相続税④市町村民税⑤固定資産税⑥事業税⑦自動車税です。国民健康保険料や国民年金保険料も破産してもなくなりません。
役所と協議をすれば分割払いにできることがあります。役所に相談してみましょう。
2. 罰金等
罰金や科料、刑事訴訟費用、追徴金、過料などです。破産してもなくなりません。
どうしても支払ができないときは役所に相談してみましょう。
3. 悪意の不法行為
わざと他人に損害を与えた場合の損害賠償請求権は破産してもなくなりません。
「わざと」とは、単なる故意ではなく積極的な害意のことです。そのため単なる故意のときは破産するとなくなります。過失のときも破産するとなくなります。
4. 故意・重過失により人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
他人にけがをさせてしまった場合等の損害賠償請求権は破産してもなくならないことがあります。
具体的には、故意や重大な過失があるときは破産してもなくなりません。
他方、通常の過失にとどまるときは破産するとなくなります。
不法行為と免責のまとめ
※以下のコンテンツは左右にスワイプしてご確認ください。
通常 | 人の生命や身体の侵害 | |
---|---|---|
害意 | ×免責されない | ×免責されない |
故意 | 〇免責される | ×免責されない |
重過失 | 〇免責される | ×免責されない |
過失 | 〇免責される | 〇免責される |
注:害意とは、単なる故意ではなく他人を害する積極的な意欲です。
注:重過失とは、わずかの注意をすれば容易に有害な結果を予見し、回避することができたのに、漫然と看過したというような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態です。
5. 婚姻費用
婚姻費用は結婚中の生活費です。婚姻費用は破産してもなくなりません。
婚姻費用は当事者の合意でいつでも変更できます。
合意ができないときでも、事情の変更があるときは裁判所に減額を認めてもらえることもあります。
そのため、支払が難しいときは減額の協議や裁判所への申立を検討してみましょう。
6. 養育費
養育費は離婚後の子供の養育にかかる費用です。養育費も支払いが難しいときは減額の協議や裁判所への申立を検討してみましょう。
7. 給料
支払わなくてはいけない給与は破産してもなくなりません。
8. わざと債権者名簿から外した債権
破産するとき、債権者の一覧である債権者名簿を裁判所に提出します。
わざと債権者名簿に債権者をのせないと、のせなかった債権者の権利は破産してもなくなりません。
手続きの途中で名簿から漏れていることに気付いたときは、すぐに裁判所に報告しましょう。
非免責債権の支払の注意点
破産をしても非免責債権はなくなりません。では、すぐに非免責債権を支払ってよいでしょうか?
破産手続終了後の支払
破産手続き終了後に非免責債権を支払うときは問題ありません。
破産手続終了前の支払
破産手続き終了前に非免責債権を支払うときは慎重に検討しましょう。
たとえば税金や罰金は支払っても問題とならないことが多いです。他方、婚姻費用や養育費を破産手続終了前に支払うと問題となることもあります。
個別の資産や収入・負債の状況により、非免責債権を支払ってよいかの判断が異なることもあります。
破産手続き中に支払うときは詳しい弁護士に相談しながら慎重に進めましょう。
まとめ:自己破産でもなくならない債務・負債
- 自己破産すると負債は原則としてなくなります。
- ただし非免責債権は自己破産してもなくなりません。具体的には①税金②罰金③悪意の不法行為④故意・重過失により人の生命・身体を害する不法行為⑤婚姻費用⑥養育費⑦給料⑧わざと債権者名簿から外した債権などです。
- 非免責債権を破産手続き終了前に支払うときは詳しい弁護士に相談しながら慎重に進めましょう。
(監修者:弁護士 辻佐和子)