最終更新日:2023年5月26日
基本的には持っている財産を手放す必要はありません。
ただし、一部例外があるので要確認です。
任意整理の場合の原則と例外
任意整理の場合、持っている財産を手放す必要はありません。自宅も、車も、預貯金も、保険も、基本的には持っておくことが可能です。
ただし、銀行系ローンを整理する場合は、その銀行に預けている預金は回収(相殺)されてしまいます。また、債権者がローンや分割払いで購入した物品は、債務整理で回収される可能性があります。
こうした財産については、次の「財産がある場合の注意事項」で対処法を紹介します。
財産がある場合の任意整理の注意事項
銀行系ローンを任意整理する場合
銀行系ローンを整理する場合は、その銀行に預けている預金は債権者に回収され、借入額と相殺されてしまいます。そのため、銀行系ローンを整理する時には、任意整理を始める前にその口座から預金を引き出しておくことが大切です。
また、任意整理をする銀行の口座は一時的に凍結されます。一定の手続き(保証会社から銀行への代位弁済)が終われば口座の凍結は解除されますが、その期間がどれくらいかかるかは金融機関の対応によってまちまちです。
もしその間にお給料がその口座に入金された場合にはしばらく取り出せませんので、当面の生活費に困る、なんてことも起こりえます。
そのため、お給料や年金、手当など、その口座にお金が支払われる予定があれば、あらかじめ振込先口座を変更しておくようにしましょう。
同様に、引落口座として使っている場合にも凍結中は支払いができません。そのため、家賃や光熱費、携帯電話代などの引落口座になっている場合には、あらかじめ支払方法を変更しておくなどの対処をしておくと良いでしょう。
購入代金を分割払いにしている場合
たとえば、自動車を分割で購入した場合には、ほとんどのケースで、ローン会社や販売店に「所有権留保」がされています。
所有権留保とは、借金を完済するまで自動車の所有権はローン会社(販売店)に残る、ということです。そのため、そうしたローンを整理しようとすると、ローン会社(販売店)に自動車を回収されてしまいます。
自動車に限らず、バイク、携帯電話やパソコン、楽器など、ローンや分割払いで購入したものには、所有権留保がされていることがあります。
そのため、分割払いの借金を整理する時には、回収されてしまうものかどうか、あらかじめ分割払い申込書などの契約書でチェックするようにしましょう。
そのうえで、引き上げられると困るものについては、任意整理の対象から外すようにしましょう。このように「整理する債権者を選べる」というのは、破産や個人再生にはない、大きなメリットです。
破産や個人再生との違い
持っておける財産
これまでみてきたように、任意整理の場合には、債権者に預けている預金や、ローンが残っている物でない限り、任意整理のために財産を手放さなければならない、ということはありません。
一方で、破産や個人再生の場合には、持っている財産によって扱いが変わってきます。
たとえば、破産の場合には、生活に最小限必要と考えられている一定の財産を除いては、持っている財産は基本的に全て手放す必要があります。
また、個人再生の場合には、財産を手放さなくてはならない、というわけではありませんが、持っている財産が多ければ多いほど、返済額が大きくなってしまうことがあります。
借金の減額幅
任意整理・個人再生・破産のどれを選択するかによって、借金を減額できるかどうか、その減額幅が異なります。一部の例外はありますが、借金の減額幅は基本的には以下のとおりです。
任意整理
将来利息をカットして分割払い。ただ、元本や既に発生している利息を減額することはできない。
個人再生
元本や既に発生している利息を減額して分割払い。将来利息も支払わなくて良い。
破産
全ての借金が0になる(免責)。
まとめ
財産を基本的に手放さなくても良いという意味では、任意整理はとても優れた制度です。
一方で、借金の減額幅としては、個人再生や破産に比べると、見劣りしてしまいます。
手元に残したい財産がどれだけあるか、任意整理で無理なく返していくことができるのか、など、おひとりごとの状況によって選択すべき手段は異なります。
自分にはどれがあっているのかは、専門家と相談しながら判断していくのがお勧めです。
(監修者:弁護士 坂口香澄)
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