最終更新日:2023年5月26日
過払い金には利息が発生します。
具体的には、①令和2年4月1日より前に発生した過払金利息の利率は年5パーセント、②令和2年4月1日以降に発生した過払金利息の利率は、年5パーセントもしくは年3パーセントで計算することになります。
目次
過払金の利息について
民法の規定では、貸金業者が「悪意の受益者」といえる場合には、利息をつけて過払金を返還しないといけません。
貸金業者が利息制限法の利率を超えて利息を受領していた場合には、多くの場合で悪意の受益者と推定されるので、ほとんどのケースで過払金には利息がつくと考えていただいて差支えございません。
(不当利得の返還義務)
第703条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
(悪意の受益者の返還義務等)
第704条 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
令和2年4月1日より前に発生した過払金利息の利率が年5パーセントの理由
改正前の民法(令和2年4月1日より前)では法定利率が5パーセントでしたので、令和2年4月1日より前に発生した過払金利息の利率は年5パーセントとなります(ただし、借主が商人の場合は年6パーセントと解釈する余地はあります。)。
改正前民法第404条
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年5分とする。
改正民法附則15条
1 施行日前に利息が生じた場合におけるその利息を生ずべき債権に係る法定利率については、新法第404条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
令和2年4月1日以降に発生した過払金利息の利率は、年3パーセントの理由
(1) 民法改正の影響
令和2年4月1日より改正民法が施行されて、民法の法定利率が年5パーセントから、年3パーセントに変更になりました(ただし、3年ごとに見直されるという複雑な仕組みにはなっています)。
(2) いつの過払金利息から変更されるのか。
過払い金の利息は、返済によって過払金が生じたときに発生すると考えられています。そのため、令和2年4月1日以降の返済によって発生する過払金利息は年3パーセントになると考えられます。
もっとも、令和2年4月1日よりも前の時点で過払金利息が発生している場合は、取引を一体としてみれば民法改正前の年5パーセントの利率で計算することも可能と考えられます。多くの方は、令和2年4月1日よりも前の時点で過払金利息が発生していると思われるので、従前どおり年5パーセントで計算することになるかと思います。
よって、結論としては、令和2年4月1日以降に発生した過払金利息の利率は、年5パーセントもしくは年3パーセントで計算することになります。
(法定利率)
第404条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年3パーセントとする。
3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
(監修者:弁護士 辻悠祐)