最終更新日:2023年5月26日

  1. 債権者の決議(同意)の有無が異なります。
  2. 利用できる人が異なります。
  3. 返済総額が異なります。

目次

個人再生手続とは

  • 借金総額を大幅に減らしたうえ、減らした借金を3年から5年で返済することにより、減った分の借金の支払義務がなくなることを目指す手続です。
  • 住宅を失うことを避けるために、住宅ローンはそのまま支払を継続することが可能です。
  • 住宅ローン以外の借金総額を大幅に減らして、3年から5年で返済することが可能です。

小規模個人再生と給与所得者等再生

  • 個人再生手続には「小規模個人再生手続」と「給与所得者等再生手続」の2種類があります。
  • 小規模個人再生手続しか使えない人とどちらも使える人がいます。
  • どちらも使える人は、いずれかの手続を選択する必要があります。

債権者の決議(同意)の有無

2種類の個人再生手続では、いずれも、

  • 借金総額を大幅に減らす
  • 減らした借金を〇年〇か月(原則3年ですが裁判所が認めれば5年以下でもOKです。)で返済する

という計画を作成して裁判所に提出します(再生計画案)。

  1. 小規模個人再生手続においては、再生計画案に同意するか反対するか債権者の決議をとります。債権者の過半数が反対したときは再生計画案が成立しません。反対意見を出した債権者の頭数または金額のいずれかが過半数に達すると再生計画案が成立しないことになっています。
  2. 給与所得者等再生手続においては、再生計画案に同意するか反対するかの債権者の決議をとるという手続を行いません。

利用できる人

1. 小規模個人再生手続を利用できる人

  • 再生計画のとおりの支払を実行しきれるような継続的な収入が将来もある見込みのある個人
  • 住宅ローン以外の借金の総額が5000万円以下

のいずれも満たす人が利用できます。

2. 給与所得者等再生手続を利用できる人

  • 小規模個人再生の条件に加えて、給与のような定期的で金額の変動幅が少ない収入を定期的に受ける見込みのある人であることが必要です。
  • 年収換算で変動幅が5分の1に達しているかが一応の目安と考えられています。

返済総額

基準が3つあります。次のAからCの基準です。

  1. 小規模個人再生手続の場合はAとBのいずれか高いほうで再生計画案を作成します。
  2. 給与所得者等再生手続の場合はAとBとCの最も高い金額で再生計画案を作成します。ただし借金総額を上回ることはありません。

A 最低弁済基準

  • 借金総額が100万円未満→全額
  • 借金総額が100万円以上500万円未満→100万円
  • 借金総額が500万円以上1500万円以下→5分の1
  • 借金総額が1500万円超3000万円以下→300万円
  • 借金総額が3000万円超5000万円以下→10分の1

B 清算価値基準

不動産、自動車、株式、退職金その他裁判所が資産と扱うものの価値の総額(価値の算出方法も裁判所が決めたルールによります。)

C 可処分所得の2年分

再生計画案を作成して提出する前の2年分の収入合計額から、次のものを控除したものです。

  • ア その2年間の間に支払った所得税、住民税、社会保険料の金額
  • イ 本人と本人に扶養される人の最低生活費

アは実際に支払った金額です。一方、イは生活保護の基準を参考に地域ごとに決められています。実際に生活にかかる費用よりはずっと少ないのが通常です。多くの場合はCの基準が最も高額になります。

手続選択

給与所得者等再生手続を利用できる人は、小規模個人再生手続を利用することもできます。手続の選択は慎重にする必要があります。考慮すべき事情は以下のとおりです。

1. 原則は小規模個人再生手続

可処分所得の2年分以上を返済しなければならない給与所得者等再生手続のほうが、返済総額が高額になることが多いです。

そのため、小規模個人再生手続を選択するのが原則です。

2. 債権者の反対により再生計画案が成立しない見込みがあるか

再生計画案に反対意見を敢えて出す業者は少ないです。しかし、必ず反対意見を提出する業者や、通常は反対意見は出さないが自社のみの反対で再生計画案が不成立になるときは反対意見を出す(たとえば借金総額が500万円でそのうち自社の債権額が300万円である場合)というスタンスの業者も存在します。

  • 債権者にこのような業者があるか
  • 1社だけで借金総額の過半数に達しているか

が考慮要素になってきます。

給与所得者等再生手続では債権者の反対があっても手続を進めることが可能です。そのため、過半数以上の債権者の反対が見込まれる場合には給与所得者等再生を選択することとなります。

3. 可処分所得の2年分の金額はいくらになると見込まれるか

債権者の決議がとおらず再生計画案が成立しないことも見込まれるとき、債権者の決議(同意)をとる手続を不要とするのは給与所得者等再生手続だけです。

しかし、給与所得者等再生手続を選択すると、返済総額の基準に「可処分所得の2年分」が加わってきます。

したがって、2年分の可処分所得を試算してみることも有益です。扶養家族の人数等によっては、それほど高額にならないこともあります。

まとめ

  1. 小規模個人再生手続は再生計画案を債権者の決議にかけます。
    給与所得者等再生手続は再生計画案を債権者の決議にかけません。
  2. 小規模個人再生手続しか利用できない人と給与所得者等再生手続も利用できる人がいます。
  3. 給与所得者等手続には返済総額について可処分所得の2年分以上という基準が加わります。

(監修者:弁護士 佐藤寿康