最終更新日:2023年5月17日
「一定の収入があり毎月の返済金をある程度用意できるとき」です。会社員や自営業者、年金生活者などは条件を満たすことが多いでしょう。
個人再生手続とは
個人再生手続は、個人の借金を整理する方法の1つです。返済総額の減額ができる、裁判所が関与する手続であるなどといった特徴があります。
一定の収入があり毎月の返済金をある程度用意できるときは個人再生手続の利用を検討できます。
個人再生手続の流れ
個人再生手続きの流れは次の通りです。
- 申立て準備
- 裁判所に申立書を提出
- 債権調査手続
- 返済総額を減額し、減額後の総額を分割払いする計画を裁判所に提出
- 計画にしたがった返済を開始
- 返済の終了
将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み
個人再生手続を利用できるのは「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある」場合です。
「将来において」の意味
では「将来において」とはどのような意味でしょうか?
「将来において」とは今後3年から5年にわたって少なくとも3か月に1回の割合で返済できる程度の収入を得る見込みであることが必要という意味です。
正社員などの給与所得者が典型
正社員で月収が安定していれば、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあると言えるでしょう。正社員は個人再生手続きを進めやすいです。
収入状況ごとの具体例
個人事業者
個人事業者は収入が不定期となることがあります。実際の入金が3か月を超える間隔となることもあります。
しかし3か月に1回の返済資金を確保できる収入があるときは個人再生の手続きを進めることが可能です。「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある」といえるからです。
では個人事業でも農業や漁業など、大きな収入が年1回程度のときはどうでしょうか?
年収を月割で計算して3か月に1回以上返済できるときは個人再生の手続きを進めることが可能です。「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある」といえるからです。
アルバイトやパートタイム勤務
アルバイトやパートタイム勤務はフルタイムの正社員と比べると退職する可能性が高いです。
しかし長期勤務の実態があれば個人再生の手続きを進めることが可能です。「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある」といえるからです。
では勤務が短期間のときはどうでしょうか?
勤務が短期間でも個人再生の手続を進めることができることがあります。ただし雇用終了時期が近いなどのときは手続きを進められないこともあります。
雇用終了時期が決まっているとき
では雇用終了時期が決まっているときは「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある」といえないのでしょうか?
雇用終了時期が決まっていると手続きを進められないときもあります。
他方、雇用終了後の再就職の見通しや無職期間の返済資金を確保できる可能性があるときは手続きを進めることが可能です。
派遣社員
派遣社員は同じ派遣先の同じ部署で一定期間を超えて働くことができません。
しかし期間終了後も次のような可能性があります。
- 部署異動
- 直接雇用
- 新たな派遣先で勤務
そのため派遣社員も個人再生の手続きを進めることが可能です。「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある」といえるからです。
定年間近の社員
原則3年の返済期間が終わるまでに定年退職となるときはどうでしょうか?
次のような場合は個人再生の手続きを進めることが可能です。
- 現在の職場での再雇用がほぼ確実
- 再就職がほぼ決定済
- 年金受給が確実
一方、定年退職後に収入がなくなることが確定しているときは問題です。
退職金支給がないとき
定年退職後の収入により返済を継続しなければなりません。
そのため退職時までに再就職先を見つけることを説得的に説明しましょう。個人再生の手続きを進めることができる可能性があります。
退職金支給があるとき
受領した退職金で返済できるときは、個人再生の手続を進めることが可能です。
なお、退職金の額や受領の時期は個人再生の返済総額に影響しますのでご注意下さい。
年金受給者
年金受給者は収入が継続的にあります。個人再生の手続きを進めることが可能です。
雇用保険受給者
雇用保険の受給は短期間です。再就職の見通しがあれば個人再生の手続きを進めることができる可能性はあります。
再就職の見通しがなければ個人再生の手続きを進めるのは難しいでしょう。
専業主婦や専業主夫
自らの収入がありません。個人再生の手続きを進めるのは難しいでしょう。
生活保護受給者
生活保護の資金を返済に充てることはできません。個人再生の手続きを進めるのは難しいでしょう。
ただし、給与と生活保護を同時に受領しているときは個人再生の手続きを進めることができる可能性はあります。
手持ちの現預金で返済できるとき
たとえば相続を理由とする現預金を持っているケースです。申立時点で収入がなく、将来も収入の見込みが全くないときは、個人再生の手続を進めるのは難しいでしょう。
一方、不安定でも収入があり、手持ちの現金預金を取り崩した分も加えれば3か月に1回以上の返済ができるときは個人再生の手続きを進めることができる可能性はあります。
まとめ:将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み
個人再生手続を利用できるのは「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある」場合です。
会社員や自営業者、年金生活者などは個人再生の手続きを進めやすいです。主婦や雇用保険受給者、生活保護受給者などは個人再生の手続きを進めにくいです。
難しいと思われる場合でも個人再生の手続きができるときもあります。詳しい弁護士に相談してみましょう。
(監修者:弁護士 佐藤寿康)