最終更新日:2023年5月26日

①財産を不当に減らさない、②特定の債権者だけへの返済をしない、③破産をすることを事前に伝えないこと等が注意すべき点です。④弁護士への早期の相談もしましょう。

目次

1. 法人破産申立前の一般的な注意点

法人破産は複雑な手続です。皆様が全く予想していない指摘を裁判所が後日してきた結果、トラブルとなることがあります。具体的には、主に以下の点に特に注意する必要があります。

  1. 財産を不当に減らさないこと
  2. 特定の債権者だけへの返済をしないこと
  3. 破産することを事前に伝えないこと
  4. 弁護士に早期に相談をすること

2. 財産を不当に減らさないことが重要

破産手続きとは、破産者の財産をお金に換価して、債権者に対して支払いを行うなどの資産や債務の整理を行うことが主たる目的となります。

そのため、破産手続きを行う前に財産を減らしてしまうことは、債権者に利益を害する行為となります、破産手続きに支障が出てくる可能性があります。

具体的には資産の低額・無償での譲渡等が典型例なやってはいけない行為です。

低額・無償での譲渡の問題点

資産を低額や無償で第三者に譲渡することは、債権者に配られるはずであった資産が目減りしてしまう行為ですので、絶対にやってはいけません。

場合によっては破産管財人(破産手続きを裁判所に変わって行う人)がその譲渡行為を否認し、後になって契約が取り消されてしまう可能性が出てきます。

相当な価格での譲渡の問題点

なお、相当な対価で譲渡した場合であっても、その資産を隠匿する目的がある場合には同様に否認される可能性があります。基本的には破産申立前の資産の譲渡は慎重にした方がよいでしょう。

財産隠匿・損壊の問題点

財産を隠匿したり、損壊したりする行為などは詐欺破産罪(破産法265条)が成立して刑罰を科せられる可能性もあります。むやみに財産の処分はしないようにしましょう。

3. 特定の債権者だけへの返済をしないことが重要

破産申立前に、「お世話になった人にだけでも返済しておこう。」などという考えから特定の債権者に返済をしようという考えになることもあります。

しかし、破産手続きではすべての債権者を平等に扱わなければならず、特定の債権者のみを優遇することは許されていません。

特定の債権者だけに返済した場合のお金の問題

特定の債権者にのみ返済をすると、「偏波弁済」という行為に該当する可能性があります。支払いを受けた債権者は破産管財人に返済を受けたお金を返さなければならなくなる可能性があります。

特定の債権者だけに返済をした場合の刑事罰の問題

特定の債権者のみに返済をした場合、「特定の債権者に対する担保の供与等の罪」(破産法266条)が成立して刑罰を科せられる可能性もあります。

そのため、特定の債権者に対する返済は決して行わないようにしましょう。

4. 破産することを事前に伝えないことが重要

法人破産を行う場合、影響を受ける関係者が多数存在することが想定されます。
具体的には、従業員や取引先、債権者等が想定できます。

会社が破産を行うということが知れ渡ってしまうと、各関係者は自分の利益のことを考えて行動する可能性があります。

従業員であれば働いた分の給料を確保するために、取引先や債権者であれば売掛金の回収や貸金の返済を行ってもらうために、会社の財産を持っていってしまう可能性があります。

結果としてパニック状態に陥る可能性もあり、場合によっては財産を散逸させてしまったことによって破産手続き内で問題が出てくる可能性もあります。

そのため、信用できる人を除いては、破産を予定していることは話さないようにしましょう。

5. 弁護士への早期相談が重要

(1) 早期に弁護士に相談をすること

やはり経営者としては破産だけは免れたいという気持ちになることは自然なことです。また、責任感が強い方はギリギリまでなんとかしようと思って頑張ってしまうこともあります。

しかし、上述のとおり、法人破産を行うためには色々と注意しなければならない点があります。

その注意点を守れなかった場合には、破産手続きがスムーズに進まなくなってしまうこともあります。

そのため、法人破産を少しでも検討されている場合には、早々に弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

(2) 資産を残しておくこと

破産手続きを行うためには色々な費用がかかってきます。
具体的には、申立を弁護士に依頼する場合には費用がかかります。また、裁判所に予納金(管財人の報酬)として数十万円以上の費用を一括で納付することになります。

そのため、現金が全くないという場合、破産手続きを行うことすらできなくなる可能性があります。ある程度余裕のある状態で破産手続きに進む必要があります。

6. まとめ

法人破産の申立をする前には以下の点が重要です。

  1. 財産を不当に減らさないこと
  2. 特定の債権者だけへの返済をしないこと
  3. 破産することを事前に伝えないこと
  4. 弁護士に早期に相談をすること

(監修者:弁護士 加藤貴紀